LDHとは

レーザードリルホール(Laser Drill Hole)の略です。

ダイヤモンドに施される処理には様々な種類がありますが、中でも最も一般的なものとして「レーザードリルホール」が挙げられます。

これは、ダイヤモンドの表面から、有色(主に黒色)の結晶やフェザー
目がけてレーザーで穴をあけ、そこに薬品を流し込み、黒味を取り除く処理で、通常「LDH」と略されます。

ソーティングにLDHと記載されます
ソーティングのコメント欄にLDHと記載されます

つまり、インクルージョンの見え方を良くして、クラリティグレードを上げることを意図した処理です。(たとえばI1がSI2に変わるだけで価格が大分変わってきます)

ただこの処理は、クラリティグレードに(下記記述の例外を除いて)影響はしません。

ただし、ソーティング袋や鑑定書には記載され、また取引価格に大きく影響してきます。

特徴と見つけ方

LDHの特徴として、パイプの発生と、処理されたインクルージョンが白濁するといった現象が挙げられます。

「パイプ」は、ダイヤモンドの表面から、処理対象となるインクルージョンに向けて穴をあけた際に発生するもので、これを通してインクルージョンに強酸を流し込みます。

強酸を流し込まれたインクルージョンは、黒味が取れ、白濁します。普通の白いインクルージョンとは異なり、塗りつぶしたように真っ白になる点が特徴です。

LDHはテーブルファセットから入れられることが多いのですが、ほとんどの場合は垂直に入れられるため、ダイヤモンドをクラウン側、それも真上からのみ観察した場合、ほぼ確実に見落とします。

クラウン側から観察する前に、ルースの場合は必ず、下記のように観察してください。

・テーブルファセットとキューレットをピンセットで挟む

・ガードルを回しながら真横から観察

・さらにパビリオン側斜めの角度から、やはりガードルを回しながらテーブルファセットを裏から観察

ダイヤが指輪やペンダントにセットされている場合は難しいですが、テーブルをかなり傾けて観察すれば、LDHを発見できる場合もあります。

また、インクルージョンの色には常に気を付けてください。一見するとパイプが無い場合でも、白濁したインクルージョンを見つけたら、一度見直してみてください。

この観察で、大抵の場合はLDHを発見できるはずです。

発見が困難なケース

先述のとおり、LDHは注意していれば大体発見することができます。ただし、いくつか例外的に発見しづらいケースがあります。

まず、ダイヤモンドの表面からインクルージョンまでの距離が極端に短い場合が挙げられます。たとえばインクルージョンがテーブルのすぐ下にある場合、特徴である「パイプ」の長さは本当にごく僅かです。こうなると、余程念入りに観察しない限りはまず発見できません。ルーペのみでの発見は極めて難しいと言えます。

また、インクルージョンが多い石の1か所だけ処理されているケースもあります。例えば、I2の石に1か所だけ、それも小さな結晶に対し処理が行われていることもあります。グレードの良しあしを問わず、しっかり観察することが重要です。

例外的なLDH

LDHは、基本的にはクラリティグレードに影響しないことは前述のとおりです。

しかし、この処理の特徴である「パイプ」があまりに目立つ場合は別です。たとえば、テーブルから垂直に入れられている場合は目立ちませんが、以下のような場合は割と簡単に確認できるため、必然的にクラリティグレードに影響が出ます。

・テーブルから斜め方向に入っている場合

・スターやベゼル等の他のファセットから入っている場合

・パビリオン側から入っている場合

・複数のファセットにわたり反射している場合

場合によっては、パイプそのものが処理対象のインクルージョンより目立ってしまうこともあり、明らかな失敗と言えるでしょう。

また、一見LDHなのか判別できない形のものもあります。異常に管が太い、レーザーで開けたはずの穴にもかかわらず折れ曲がっている・・・などです。

こういった場合も、やはりパイプがなにがしかのインクルージョンに届いているか、対象のインクルージョンは白濁しているか、などを確認することで判断できるかと思います。