ダイヤモンドのカットグレードは、標準的な、ラウンドブリリアントカット(RBC)に限られます。
したがって、その他のマーキスやペアシェイプなどには、主観的な美しさの判断はありますが、グレードというものはありません。

良いカットとはどういうものかですが、光を反射する角度がエクセレントの範囲に入っていて左右対称な形と研磨の状態、つまり
プロポーション:研摩石のファセットの角度、相対的な寸や割合および両者の相互関係
フィニッシュ:研摩の質やカットの正確さ(ポリッシュ)、あるいは対称性(シンメトリー)
が良いということと、その結果として
輝き(外観要素:ブライトネス・ファイヤー・シンチレーション(パターン))が強いものと言っていいと思います。

鑑定機関では、GIAファセットウェア™データベースが組み込まれたプロポーション測定器に基づく推定カットグレードと熟練のグレーダーの目視によるガードル厚さ、キューレットサイズ、ポリッシュ、シンメトリーの他、「ペインティング」と「ディギングアウト」の評価)がありますが、ここでは割愛します。

上記のプロポーションフィニッシュ、更に外観要素を踏まえて、下記の5段階評価します。
エクセレント(EXCELLENT)
ベリーグッド(VERY GOOD)
グッド(GOOD)
フェアー(FAIR)
プア―(POOR)

以下に、それぞれの項目における、その確認方法を紹介します。

プロポーション

ここでは、プロポーション測定器がない代わりに、一般的な店舗でも必ず持っているだろう、ルーペノギスで目測できる確認方法を踏まえて記載します。
●テーブル%
下記のような線が、内ぞりか外ぞりかあるいは直線か、また、そのそり方の程度を確認することで、テーブル%を推察することが可能です。
ダイヤモンドのテーブル%

テーブル%が52%~62%がエクセレントの範囲で、それより大きくなればなるほど、小さくなればなるほど、評価は下がっていきます。
乱暴な判断をすれば、外ぞりとはっきり判断できた段階でエクセレントはないと想定できます。

※ただし、この方法はスターファセットとアッパーガードルファセットの長さの割合が1:1であることが前提となります。
スターファセットの長さが長い場合、テーブル%に1~6%加え、
逆に少ない場合、テーブル%に1~6%減らす必要があります。
したがって、下記のようにスターファセットの比率もチェックします。


●クラウン角度
<プロフィール法>
ダイヤモンドをピンセットで下記のようにサイドから観察し、ベゼルファセットの角度を推定します。クラウン角度を推定する場合、垂直方向に対して半分は45°で、1/3は30°ということを覚えておけば、だいたい推察できます。
ダイヤモンドのクラウン角度プロフィール

<フェースアップ法>
ダイヤモンドのフェースアップで下記のような矢印に似た模様を観察することで、クラウン角度の推定が可能です。
※なお、この方法は、カットが比較的良くないとばらつきがあったり、映らなかったりするので、その際には、プロフィール法のみで推定します。

ダイヤモンドのクラウン角度フェースアップ

クラウン角度が、31.5°~36.5°がエクセレントの範囲で、それより大きくなればなるほど、小さくなればなるほど、評価は下がっていきます。


●パビリオンの深さ%
フェイスアップでキューレットを石の中央に持ってきて、パビリオンメインに映るスターファセットの反射像からキューレットまでと、テーブルコーナーからキューレットまでの距離を比較することで、パビリオン角度が分かり、その値からパビリオン深さ%が分かります。


40.6°~41.8°がエクセレント範囲で、それより大きくなればなるほど、小さくなればなるほど、評価は下がっていきます。




乱暴な判断すれば、反射像である円がそもそも観察しずらい状態であれば、カットは良くないと判断できます。

上記までは、鑑定機関などでは、プロポーション測定器による測定ですが、プロポーションの内、下記のガードルの厚さキューレットサイズの判断は鑑定機関でもグレーダーの目視による判断となります。

●ガードルの厚さ
5段階評価します。これは慣れを要しますが、厚すぎてもよくないし、薄すぎてもよくない。

●キューレットサイズ
キューレットは、面が存在しないのが一番良いのですが、10倍ルーペでみて、大きく見えれば見えるほど評価が低くなります。
この段階の判断も慣れを要します。5段階評価します

フィニッシュ

上記までのプロポーションで、これまで全くカットグレードが分からなかった方は、大きくグレード判断が間違えることはなくなりますが、
もう少し慣れてきたら、下記の要素の判断に加えればよいと思います。(あくまで当社判断)
この評価はクラフトマンシップの技巧を評価するもので、それぞれの特徴を調べて、その印象から5段階評価します。
●ポリッシュ
クラリティグレードの表面特徴(ブレミッシュ)と類似していますが、研摩されたダイヤモンド表面の研磨状態を5段階評価します。

●シンメトリー
研摩されたファセットの対称性を5段階で評価します。
良くない例として、下記のようなものがあります。
中心からずれたキューレット
円形でないガードル輪郭
ファセットの先端が合っていない
クラウンとパビリオンの配列のずれ
テーブルが八角形でない
ファセットが崩れいている
ガードルが波打っている
テーブルとガードルが平行ではない

外観要素(アピアランス)

●ブライトネス
フェースアップで観察した時に見える「白色光」の内部および外部反射の外観、またはその程度を5段階で評価します。

●ファイアー
フェースアップで観察した時に見えるスペクトルカラーに分散する光の外観、またはその程度を5段階で評価します。

●シンチレーション
-スパークル 光源が移動するときらめく閃光部分の外観またはその程度を指す用語。従来の定義。

-パターン 静止しているときに見える、内部および外部反射に由来する明るい部分と暗い部分の相対的大きさ、配置、コントラストの程度
好ましくない例として、上記のパビリオン深さ%に影響していますが、テーブル全体が暗く見える「ダークセンター」。
逆に浅すぎて、テーブルの内側にガードルが映ってしまう「フィッシュアイ」など。

●過重量
同じ直径の石でも、ガードルを非常に厚くして重量を稼いでいるものは、過重量として低く評価します。
当店の査定方法でも、例えば同じ1カラットのダイヤモンドでも直径6.5㎜の石に対して、5.7㎜程度しかない場合、
過重量として、買取評価を下げています。